磁気治療はもはや誰もが知る治療法のひとつであるが、かつては半信半疑の治療法でしかなかった。
もちろん、現在も磁気治療が絶大なる効果を持っているとは言い難いが、歴史を辿ってみると非常に高い効果をもった磁気治療で世間を賑わせた人物がいる。
それが「フランツ・アントン・メスメル」だ。
そこで今回は磁気を百薬とする治療師「フランツ・アントン・メスメル」に迫る。
磁気治療の第一人者「フランツ・アントン・メスメル」
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フランツ・アントン・メスメルは次のような考えを持っていた。
「宇宙は磁気で満ちている。磁気は人体にも存在し、天体の運動のバランスが崩れると人体も病む」
彼はこの考えをベースとして、独自の磁気治療を確立。こうして彼は磁気を用いた治療の第一人者として知られるようになった。(※正確には「催眠療法」の第一人者と表現したほうが正しいかもしれない)
メスメルの磁気を用いた治療はフランス革命前後のパリで圧倒的な効果を発揮し、世間から“奇跡の治療師”として有名になる。
なお、彼が磁気治療に利用したのは生命体に内在する磁気。胃けいれんに悩む人をはじめ、神経痛、頭痛、生理痛、不眠症などの症状に抜群の効果を見せた。
メスメルの磁気を用いた治療は以下のとおり。
- 治療用の鉄の棒が備え付けられたテーブルに患者を座らせる
- 患者はその鉄の棒を握る(触る)
- メスメルが磁気棒をもって患部に触れたりなでたりする
- 患者たちは一種の興奮状態になる(なかには失神する者もいたらしい)
- 興奮状態が冷めた患者は病気が改善されている
これだけの工程でありながらも、その効果は信じられないほど高かったのだという。
抜群の効果をもった磁気治療を施したメスメルの生い立ち
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非常に効果的な磁気治療で人々を癒したメスメルは、オーストリアの裕福な家庭に生まれた。
彼の学歴は申し分なく、修道学校を卒業した後は名門「ウィーン大学」に進学。そこで医学博士号を習得した後、その地で医師として生活していた。
つまり、もともとメスメルは医師であり、ズブの素人が磁気効果をもつ治療法を編み出したわけではない。だからこそ、彼は歴史上に名を残す人物になったわけだが・・・。
ある日のこと、彼は胃けいれんを起こしたイギリス人女性に居合わせる。その女性は磁気治法の信じる人物だったこともあり、イエズス会の神父の手を借りて、磁石で激痛を取り除いていた。
これを目撃したメスメルは、磁気を使った治療の効果をより探るようになる。
そう、イギリス人女性が磁気治療されていた様子を見たことがきっかけで、彼の磁気治療が確立されていくのだ。
栄華は長続きせず、晩年は田舎暮らしを余儀なくされる
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メスメルは1778年に本拠地をパリに移す。
当時所属していたフリーメーソン団体を通じて、ウィーンで目撃した磁気治療とその効果を紹介。それから間もなくして、磁気治療が話題となり、コンデ皇子、ラファイエット侯爵、ブルボン侯爵たちなど、一流の貴族がメスメルに魅了された。
そして、抜群の効果をもった彼の磁気治療は、“メスメリズム”として確立される。
確かな効果で磁気の可能性を広めたメスメルであったが、その栄華は長続きすることはなかった。
実際に効果をもたらした磁気治療も、次第に方法自体が怪しいものと噂されるようになり、メスメルはフランスを追われることになる。
こうして彼はスイスの片田舎でひっそりと暮らすこととなった。
何の疑いも持たれずにパリで活躍していたら、メスメルの人生は違ったものになっていたことだろう。
しかし、これが彼の運命だったのかもしれない。
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